前回に続いて、熱中症のお話です。皆さんは暑さ指数、WBGTという言葉を聞いたことはありますか?暑さ指数WBGT(湿球黒球温度:Wet Bulb Globe Temperature)は、熱中症を予防することを目的として1954年にアメリカで提案され、その後、ISO(国際標準化機構:International Organization for Standardization)により国際的に規格化、労働環境や運動環境の指針として有効であると認められています。 体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目し、気温、湿度、輻射(放射)熱から算出される暑さの指数で、運動や作業の度合いに応じた基準値が定められています。単純に気温だけでなく、湿度や日差しの違いも考慮されているので、より的確な熱中症予防の指標になるということです。環境省のホームページ(熱中症予防情報サイト)に、各地点の観測値と予想値が掲載されているので、熱中症予防の参考にしてもらえればと思います。また、暑さ指数メール配信サービスを利用すれば、熱中症予防メールを受け取ることもできます。LINEアプリで環境省のLINE公式アカウントを友達追加して、熱中症警戒アラートの発表や暑さ指数の情報を受け取ることもできます。
◆ 環境省 熱中症予防情報サイト
https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt_data.php
暑さ指数メール配信サービス(熱中症予防情報メール)
https://www.wbgt.env.go.jp/sp/mail_service.php
LINEアプリを活用した熱中症警戒アラート・暑さ指数の情報配信
https://www.wbgt.env.go.jp/sp/line_notification.php
◆ 暑さ指数とは?
暑さ指数(WBGT)は、下記の3種類の黒球温度・湿球温度・乾球温度の測定値をもとに算出されます。気温は単純に「大気の温度」ですが、暑さ指数は気温1割、輻射熱の効果は2割、湿度が7割を占めており、湿度が最も大きく指数に影響します。湿度が高い場所では、体から熱を放出するための汗が蒸発しにくい状態になるので、熱を体の外に逃がしにくくなり体内に熱がこもりやすく、熱中症になりやすいのです。
暑さ指数(WBGT)=気温の効果1:湿度の効果7:輻射熱の効果2
●暑さ指数の算出式●
・屋外での算出式
WBGT(℃) =0.7 × 湿球温度 + 0.2 × 黒球温度 + 0.1 × 乾球温度
・屋内での算出式
WBGT(℃) =0.7 × 湿球温度 + 0.3 × 黒球温度
黒球温度(黒色に塗装された薄い銅板の球の中心に温度計をいれて観測した温度)
湿球温度(水で湿らせたガーゼを温度計の球部に巻いて観測した温度)
乾球温度(通常の温度計で気温を観測した温度)
環境省の熱中症予防サイトでは、暑さ指数に対する日常生活に関する指針・運動に関する指針が示されているので参考にしてください。暑さ指数(WBGT)が28以上になるとすべての生活活動で熱中症になる可能性があります。
■WBGT 31以上:危険
運動は原則中止、特に子どもの場合には要注意。
通常の生活活動においても熱中症になる危険性あり。
高齢者においては安静状態でも発生する危険性が大きい。
外出はなるべく避け、涼しい室内に移動する。
■WBGT 28~31:厳重警戒
激しい運動は中止、通常の生活活動においても熱中症になる危険性あり。
外出時は炎天下を避け、室内では室温の上昇に注意する。
運動する場合は、10~20分おきに休憩をとり水分・塩分の補給を行う。
■WBGT 25~28:警戒
運動や激しい作業を行う際には定期的充分な休息を取り入れ積極的に適宜、水分・塩分を補給する。
激しい運動では、30分おきくらいに休憩をとる。
■WBGT 25未満:注意
一般的に熱中症になる危険は少ないが激しい運動や重労働時には発症する可能性あり。
マラソンなど長い時間にわたる運動時には適宜水分・塩分の補給は必要。
参考:環境省 熱中症予防サイト
https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt.php
◆ 熱中症警戒アラート
熱中症警戒アラートと言えば、聞き覚えがあるかもしれませんね。「熱中症警戒アラート」は、熱中症の危険性が極めて高くなると予測された際に、危険な暑さへの注意を呼びかけ、 熱中症予防の行動をとってもらうための情報です。暑さ指数の値が33以上と予測された場合、気象庁の府県予報区等を単位として発表。また、発表内容には、暑さ指数の予測値や予想最高気温の値だけでなく、具体的に取るべき熱中症予防行動も含まれていることが特徴です。
◆ 熱中症は予防が大切
熱中症は命にかかわる病気ですが、暑さ指数(WBGT)をチェックし、意識して対策を取ることで予防できます。今一度、具体的な対策を見直してみましょう。
①暑さを避ける
●室内では
- 遮光カーテン・すだれ・打ち水を利用
- 扇風機やエアコンで温度を調節
- 室温をこまめに確認、WBGT値※も参考に
●屋外では
- 日傘や帽子の着用
- 日陰の利用、こまめな休憩
- 天気のよい日は、日中の外出をできるだけ控える
●からだの蓄熱を避けるために
- 通気性のよい、吸湿性・速乾性のある衣服を着用する
- 保冷剤、氷、冷たいタオルなどで、からだを冷やす
②こまめな水分補給
喉が渇く前にこまめに水分補給する。また水分だけでなく、ナトリウムなどのミネラルの補給も忘れずに。水分を大量に摂取することで血液中のナトリウム濃度(塩分の濃度)が低下すると、錯乱、意識障害、性格変化、呼吸困難など死亡事故につながる「低ナトリウム血症」を引き起こします。スポーツドリンクや塩あめなどで塩分も補給しましょう。
③日ごろからの健康管理・暑さに備えた体づくりを
日ごろから健康管理や健康チェックをし、体調が悪い時には無理せず休むことが大切です。また体が暑さに慣れるように、「やや暑い環境」で「ややきつい」と感じる強度で毎日30分程度の適度な運動をお勧めします。
◆ マスク着用にも気をつけて
コロナウイルス感染防止のためにこれまで屋外においてもマスク着用がスタンダードになっていましたが、屋外ではマスク着用によって、熱中症のリスクが高まります。近距離(2m以内)で会話をするとき以外、屋外での散歩やランニング、通勤、通学等もマスクの着用は必要ありません。マスクを着用する場合でも、屋内で熱中症のリスクが高い場合には、エアコンや扇風機、喚起により、温度や湿度を調整して暑さを避け、こまめに水分補給をしましょう。
環境省・厚生労働省より(令和4年6月)
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/nettyuu_taisaku/pdf/seikatuyousiki/seikatuyousiki.pdf