検診で甲状腺の異常があると言われたことはありませんか?自覚症状がないので放置しているという人も多いようです。また、なんだか身体の調子がわるいけれど、原因がわからないという人も次のような症状がある場合は、甲状腺疾患かもしれません。
【首が腫れている・脈が速い・むくみがある・年中汗がでる・不眠・なんとなくだるい・疲れやすい・無気力になる・冷える・いつも眠い・物忘れしやすい】
甲状腺の病気の種類によって、あらわれる症状はさまざま。いずれかに当てはまっていても、更年期障害?うつ病?単なる怠けグセ?とも間違えられやすく放置されがちです。甲状腺の異常があるかどうか一度検査してみてはいかがでしょうか。
◆ 甲状腺って何?
甲状腺は、ノドボトケのやや下にあって、蝶が羽を広げたような形をしています。大きさは縦が4㎝ほど、重さ10g~15gの小さな臓器。心臓や肝臓、脳など全身の臓器に作用して新陳代謝を活発にする甲状腺ホルモンを分泌する働きをしています。甲状腺ホルモンは人間が生きていくために欠かせないもので、なくなると1~2ヶ月くらいしか生きられないと言われています。正常な状態では柔らかいので、外から手で触ってもわからないのですが、腫れると手で触っても確認でき、さらに大きくなると首を見ただけでも腫れているとわかるようになります。
◆ 甲状腺の異常とは
人間が生きていくために欠かせない甲状腺ホルモンですが、過剰に分泌されても不足しても体には影響がでてしまいます。甲状腺ホルモンが過剰に分泌されると甲状腺機能が亢進する病気になります。代表的なものとして「バセドウ病」があげられます。逆に、甲状腺ホルモンが不足すると甲状腺機能が低下する病気「橋本病」になります。「バセドウ病」も「橋本病」も本来自分の身体を守る免疫が自分自身の甲状腺を刺激することに関係しているとされています。いずれも女性に多くみられます。また他にも甲状腺の異常として、甲状腺の一部にシコリ(結節)ができる結節性甲状腺腫があります。良性と悪性があり、ほとんどの場合は良性ですが、悪性の場合の大半は甲状腺がんで手術が必要となります。
◆ 甲状腺機能異常による症状
結節性甲状腺腫・・・甲状腺の機能に異常がないことが多いので自覚症状はない場合が多く、しこり、腫れが大きくなって気づくことが多い。
◆ 甲状腺の検査
血液検査とエコー検査、どちらも前日の食事制限などの負担がなく、簡単に検査可能です。
●血液検査・・・自覚症状があって、甲状腺機能の亢進や低下が認められる場合は血液検査を行います。血液中の甲状腺ホルモン(FT3とFT4)や、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌量、自己抗体値、コレステロール値等から診断します。
●エコー検査・・・喉の下の甲状腺が腫れている場合はエコーで検査を行います。超音波をあてて、腫瘍の有無や大きさ、良性か悪性かを確認します。
◆ 甲状腺の治療
バセドウ病と橋本病は、薬物療法が中心です。
●バセドウ病の場合・・・第一選択として甲状腺機能を抑えるための薬を使用します。個人差はありますが、2~3週間で動悸などの症状は改善されますが、再発防止のために1~2年は薬を服用します。2年以上薬物療法を行っても終了の目途が立たない場合は、放射性ヨウ素内用療法(アイソトープ)といった放射性ヨウ素カプセルを服用し甲状腺ホルモンを破壊する治療が検討されます。また手術が必要となる場合は稀ですが、甲状腺の大部分を摘出する手術療法もあります。
●橋本病の場合・・・不足している甲状腺ホルモンを補う薬を使用します。薬を飲むことで甲状腺機能が回復するということではないので薬の服用は経過観察をしながら継続して行います。また、海藻類などのヨードを含む食品は取りすぎると甲状腺の機能低下を招くので注意が必要です。
●結節性甲状腺腫の場合・・・良性の場合、原則的には治療はしません。悪性の場合は手術が基本となります。ただ、良性の可能性が高いと思われていた腫瘍が経過とともに悪性と判明するケースや、悪性で手術後に再発するケースもあるので、いずれの場合も定期的な経過観察は必要となります。