逆流性食道炎にがんのリスク

近年増え続けている逆流性食道炎。1970年代には人口の3%ほどでしたが、1990年頃から増え始め2010年頃には20%を超え5人に1人、現在では30%前後つまり3人に1人くらいが逆流性食道炎になっていると言われています。その多さは花粉症などのように「新・国民病」と言ってもいいかもしれません。そして「逆流性食道炎」という言葉に耳慣れてしまい、気にせず放置する人もいらっしゃいますが、がんになるリスクもはらんでいるので要注意です。

 

逆流性食道炎の症状

代表的な症状としては、胸やけや胸の重たい感じ、酸っぱい液体が口まで上がってくる吞酸(どんさん)。ゲップがよくでる、のどの違和感や声がれ、乾いた咳が続くなどの症状があり、長く続くことにより気管支喘息につながることもあります。

 

逆流性食道炎のしくみ

口から入った食べ物は、食道を通って胃へ運ばれます。そして胃に到着すると胃酸によって食べ物が分解され消化される仕組みです。食べ物を消化する力を持つ胃酸はとても強いので、胃は胃酸に荒らされないようにしっかりと粘膜で覆われて保護されています。一方、食道の粘膜は防御機能が弱く、胃のように保護されていません。そこへ本来は食道から胃へ一方通行のはずの通り道に、強い胃酸が食道に逆流すると、食道粘膜にびらんや潰瘍などの炎症を起こして、逆流性食道炎になります。食道に炎症がみられる場合は、胸やけや呑酸などの症状があってもなくても逆流性食道炎です。また自覚症状があるのに食道に炎症が見られない非びらん性胃食道逆流症もあり、逆流性食道炎と合わせた総称を胃食道逆流症(GERD)といい、GERDの患者数は増加しています。

 

逆流性食道炎の原因

食の欧米化により、脂っこいものを取ることで、それを消化するために胃酸の分泌が盛んになり、胃液が多くなることが原因の一つ。他にも刺激の強い辛い物・甘いもの・たばこ・アルコールやストレスなどが要因となって、胃の粘膜を荒らしたり、胃酸分泌や逆流を起こしやすくなります。また、ピロリ菌感染者の減少も逆流性食道炎の増加につながっていると言われています。ピロリ菌は胃がんのリスクになるので除去する人が増え、胃がん予防が進んでいますが、一方でピロリ菌がいなくなると、胃が活発になり胃酸の分泌が増加し、逆流する可能性も高くなるからです。その他、老化によって胃と食道のつなぎ目の筋肉が緩み、逆流してしまうことや、逆流した酸に過敏に反応すると炎症は起こっていなくても胸やけなどの症状は強くなります。また、メタボリックシンドロームなどの内臓脂肪が多い場合や、高齢により前かがみの姿勢になると、胃が圧迫されて胃液が逆流しやすくなります。

  • 胃液が多い
  • 胃と食道のつなぎ目の筋肉が緩む
  • 食道が過敏になっている。
  • 胃が圧迫される

 

逆流性食道炎が食道がんのリスクを上げる

胃酸の逆流が長期間繰り返されると、胃酸の刺激を受け続けた食道の粘膜の組織が胃の粘膜に似た組織に変わり、バレット食道と呼ばれる状態になります。バレット食道は『食道腺癌(せんがん)』という特殊な食道がんになりやすいのです。逆流性食道炎の中でバレット食道へ変化する数はごく一部とされていますが、近年確実に増加しています。バレット食道は内視鏡の検査で診断できるので逆流性食道炎の段階で放置せず、医師と相談しながら治療・定期的な検査を行い見守ることが大事です。

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