長引く咳の原因に逆流性食道炎の可能性

依然、コロナ禍が続いていますね。電車に乗っている時、咳が出ると周囲の視線を一斉に浴びてしまうという事態。冬の乾燥の季節が終わってもなお、なぜか咳だけが続いている方も多いのではないでしょうか。2週間以上続く咳は風邪などの感染症が原因ではありません。では何が原因でしょう?もちろん肺がんや間質性肺炎、結核など重篤な病気の可能性や、マイコプラズマなどのウィルスの場合もあります。ほかにも以前ブログにも書きましたが「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」や、近年増加傾向の「咳ぜんそく」の場合もあります。そして今日は、意外にも「逆流性食道炎」が咳の原因になるというお話です。

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逆流性食道炎とは

逆流性食道炎は、さまざま原因により胃の内容物や胃液が食道に逆流する病気です。胃液は強い酸性なので、食道の粘膜を刺激して潰瘍やびらんなどの炎症が起こります。本来、食道と胃のつなぎ目にある「下部食道括約筋」の働きで食べ物が通るとき以外は閉じて逆流を防いでいるのですが、筋肉の筋力低下やストレスなどの要因により、機能が衰えて逆流してしまうのです。その他、肥満や妊娠などで胃に圧力がかかり逆流することもあります。また、胃酸は肉や脂肪分の多い食品の摂取で多く分泌されるため、食生活の欧米化によって胃酸が増えすぎていることも逆流が起こる主な原因と考えられています。とすると、昔は日本人には見られなかった逆流性食道炎が近年増加しているということも説明がつきますね。

 

咳も逆流性食道炎の症状の一つ

咳が出ることと、胃や食道といった消化器の疾患が関係ある?と不思議に思われる方も多いでしょう。ですが、逆流した胃酸が喉や気管支を刺激したり、食道の粘膜を通して神経を刺激することで、慢性の空咳や声がれの症状につながるのです。ただ、症状の表れ方は人それぞれで、胸やけや胸痛、呑酸などの消化器系だけの症状の人もいますし、咳や声がれの症状だけの人、両方の症状が出る人もいます。胸やけや呑酸がなく、咳の症状だけだと、なかなか逆流性食道炎だとご自身で気づくのは難しいかもしれません。

◎胸やけや胸の痛み
◎呑酸(酸っぱいような苦いような液が上がってくる感じ)
◎げっぷがよく出る
◎コンコンといった乾いた咳
◎声がれや喉の違和感

 

逆流性食道炎の診断と治療

逆流性食道炎の症状は咳ぜんそくと似ていて、咳ぜんそくの治療をしても効果がない場合に逆流性食道炎の治療をして咳が治ったという例がいくつもあります。逆流性食道炎の診断は自覚症状と上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)により行います。自覚症状のみによる診断の場合、お薬で完全に症状が改善されない時は他の病気の可能性があるので内視鏡検査を受ける必要があります。他にも必要に応じて行う、胃の中と食道の中のpHを測る胃酸分布測定(24時間pH(酸性度)モニタリング検査)、プロトンポンプ阻害薬という胃酸の分泌を抑える薬を2週間飲んで症状が改善するかを確認するPPIテスト(Proton Pump Inhibitor テスト)などがあります。

内服薬による治療では、胃酸の分泌を抑える薬、食道や胃の機能の正常化を促す薬、食道粘膜保護薬などを使用します。お薬による治療で効果がない場合や長期の服用が必要な場合、大きな食道裂孔ヘルニアの場合などは手術が必要となる場合があります。そして、再発を防ぐためにも、下記のような生活習慣の見直しが必要です。

 

逆流性食道炎予防のためにできること

胃酸の分泌を抑えたり、逆流を起こしにくくするために、注意してほしいのが食後・腹圧・食生活です。

  • 食べてすぐ横にならない。
  • 夕食後2~3時間経過後の就寝
  • 猫背や長時間の前かがみ姿勢にならないよう気を付ける。
  • ベルトやガードルなどでお腹をしめつけない。
  • 脂肪分の多い食事や刺激の強い物、過度のアルコールは控える。
  • 食べ過ぎ・早食いは禁物。
  • 禁煙

食後にはガムを噛むのがおすすめです。唾液の分泌量が増え、食道を胃酸から守ってくれるからです。虫歯予防も兼ねてキシリトール入りのガムがいいですね。

 

長引く咳でお困りの場合

コロナ禍での長引く咳は心配です。当院では新型コロナウィルスPCR検査も可能、内視鏡の検査も感染予防対策を実施しながら行っていますので、長引く咳の原因を調べましょう。

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