オンライン診療の未来 〜医療におけるデジタルトランスフォーメーションの一翼を担う〜

前回までは当院がオンライン診療を始めたきっかけや、オンライン診療のメリット、デメリットについてお話してきました。

今回は新型コロナウイルスが蔓延したり、世の中でデジタルトランスフォーメーション(DX)が推進される状況において、オンライン診療にどのような未来があるのか、お話してみたいと思います。

2020年5月4日に政府により緊急事態宣言の延長が発表された際、新しい生活様式の提言がありました。
日常生活でも仕事でも常にソーシャルディスタンスを意識し、人同士の接触を極力避けるというものです。
コロナによって世界は大きな転換期を迎えています。
これまでの世界は対面が当たり前で、オフライン中心の世界でした。
しかしコロナ蔓延の状況下では人同士の接触を避けるべきとされ、「強制オンラインの世界」となりました。

当院でも緊急事態宣言下の時期にオンライン診療の利用者が急に増えたのも、強制オンラインがもたらした結果と言えるのかもしれません。
そしてこれがどれくらい先になるかわかりませんが、コロナの事態が終息または一般化する時期がいずれやってきます。そこではコロナ以前の世界に戻るのではなく、コロナが前提となる社会として、オンオフが融合する世界になると思われます。
医療においても社会の変化を想定し、対面のみを前提としない医療への転換が必要です。
オンライン診療の活用を前提として、オンライン診療と対面診療とが組み合わさって利用されていくのではないかと思います。

さて、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」はいまや世の中の企業全てが意識せざるを得ないキーワードとなっています。
2018年9月に経済産業省は「DXレポート」を公表しました。
将来の成長・競争力強化のために新たなデジタル技術を活用して新たなビジネスモデルを創出・柔軟に改変するDXの必要性は広く認されていますが、それを実行するうえでは様々な課題があり、解決されない限りは、2025年以降に最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性がある(いわゆる2025年の崖)とのショッキングな内容でした。
社会はデジタル化による恩恵を受け、特に2010年代以降、加速度的成長を遂げてきました。「第4次産業革命」とも表現されます。
そして医療においてもデジタル技術を活用し、革新的な医療の形を目指すべきという方向性は疑いようのないことです。

残念ながら医療は社会全体と比較すると、デジタル化が遅れていると言わざるを得ないとも感じています。
ウェアラブルデバイスは患者さんの身体の状況をより手軽に把握することができ、通信機能を搭載すれば遠隔で医師が情報にアクセスすることも可能になるため、オンライン診療とも親和性が高いと思います。
AIの著しい進歩も無視できません。すでに内視鏡検査の画像診断分野では人間を上回る結果も出しており、将来的には医療、特に診断分野においての存在感を高めることになるでしょう。
(もちろん現時点では、AIは医療の全ての分野において医師にとって代わるほどの成熟はしていないことから、AIを局所的に有効利用し、医師が医療の全責任を負う方針に変わりありません)
医療におけるデジタル化を進める上での一翼を担うものとして、私は「オンライン診療推し」です。
メリット・デメリットをきちんと認識したうえで、適切にオンライン診療を運用することによって、例えば対面するほどではない安定した病状の方への診察の手間を軽減し、対面診察をしなくてはならない患者さんへの診察に手間をかけるというような「医療資源の最適化」をすることができます。
これは結果的に患者さん、そして社会が受ける恩恵を全体として最大化できるものだと思います。

医療におけるデジタル化、そしてオンライン診療の未来はまだまだ壮大な広がりがあると思っています。

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