胃の痛みや胃もたれなど、胃の不快感に悩まされているのに検査しても異常がないと言われた経験はありませんか?それは「機能性ディスペプシア」かも知れません。
◆ 「機能性ディスペプシア」という病気を知っていますか?
舌を噛みそうなこの病名、聞いたことがないという人も多いと思いますが、意外にも患者数は「胃に不調を感じて病院を受診した人」の約半数(45~53%)という調査結果が出ており、決して珍しい病気ではありません。また「健康診断で見つかったという人」は11~17%で、誰もがかかる可能性のある病気です。
◆ 「機能性ディスペプシア」ってどんな病気?
ディスペプシアの語源はギリシャ語の「消化不良」で、胃やみぞおちの痛み、胃もたれなどの胃の不快感などを意味します。この病気の厄介なところは、内視鏡検査をしても胃の粘膜などに「目に見える異常が見つからない」というところ。目に見える原因が見つからないのに、胃の働き(=機能)に問題がある病気なので、機能性ディスペプシアという病名になりました。
◆ 機能性ディスペプシアについて
[診断基準]
機能性ディスペプシア(FD:Functional Dyspepsia)は2013年に認められた疾患なので、これまで神経性胃炎やストレス性胃炎、慢性胃炎と診断されてきた人は機能性ディスペプシアの可能性があります。
最新の基準は2016年に発表された以下のRomeⅥ基準です。
症状の原因となる器質的な疾患が見つからないにも関わらず
- わずらわしい食後のもたれ感(膨満感(ぼうまんかん))
- 早期満腹感(食べ始めてすぐに満腹になってしまうこと)
- みぞおちの痛み
- みぞおちが焼けるような感じ
4つのうちの1つ以上が3ヵ月以上続いている。
※それ以外にも、胃のむかつき、食欲不振、吐き気、嘔吐など、様々な症状がでるケースがあります。
[種類]
症状の内容、タイミング、頻度などによって以下に分類されます。
※両方の症状がでるタイプもあり、明確に分けられない場合も多いのが現実です。
●食後愁訴(しゅうそ)症候群(PDS:postprandial distress syndrome)
食後の胃もたれ感、早期満腹感
●心窩部(しんかぶ)痛症候群 (EPS:epigastric pain syndrome)
心窩部(みぞおち)の焼けるような感じ、痛み
[原因]
主に胃や十二指腸などの消化管の運動機能異常や知覚過敏、胃酸の分泌異常、心理的・社会的要因、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染などがあげられます。症状を引き起こす原因はさまざまで、とても複雑に絡み合っており、中でもストレスによる自律神経の乱れは、症状の原因や悪化に大きく関わっていると考えられます。
※ピロリ菌の除菌によって症状が改善される場合は、ピロリ菌関連ディスペプシアとして、機能性ディスペプシアとは分けられます。
[治療]
生活習慣の改善や薬物療法を行います。過食や喫煙、過度のアルコールは控えるなど食生活の改善や、十分な睡眠とストレスをためない生活習慣が大切です。薬物療法はそれぞれの症状や原因に合わせて、消化管の運動機能を調整する薬、胃酸の出過ぎを抑える薬や、ストレスを和らげる薬などを用います。
「命にかかわる病気ではないから」「検診でも異常がなかったから」と症状を我慢していると、不安やうつなどにより症状の悪化を招きかねません。また、つらい症状によって勉強や仕事に支障をきたし生活の質(QOL)の低下に繋がる場合や、胆嚢や膵臓の病気が隠れている場合もあります。ストレスと大きく関わる現代病ともいえる機能性ディスペプシア、身体からのSOSのサインを見逃さずに医療機関を受診しましょう。
下記に当てはまる項目がある人は、機能性ディスペプシアの可能性があります。
[症状]
☑胃の痛み・胃が重い
☑胃もたれ
☑すぐにお腹がいっぱいになる
☑食欲不振
☑みぞおちの痛み
☑みぞおちの焼ける感じ
☑健康診断では特に異常はないと言われたが上記のような症状がある
[生活]
☑脂っこいもの、刺激の多いものをよく食べる
☑早食い
☑過度なアルコール摂取
☑タバコを吸う
☑不規則な生活
☑睡眠が不足しがち
☑ストレスを感じている
[参考URL]
https://www.jsge.or.jp/guideline/disease/fd.html
https://www.jsge.or.jp/guideline/guideline/pdf/FDGL2_re.pdf#page=33
http://www.shinshin-igaku.com/everyone/column_08.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/105/9/105_1611/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpdd/21/1/21_12/_pdf/-char/ja