ABC検診という言葉を聞いたことはあるでしょうか。血液検査でピロリ菌抗体と血清ペプシノーゲンを測定する事によりどのくらい胃がんになりやすいかを判定する検診になります。
◆ ピロリ菌抗体検査
血液検査にてピロリ菌に対する防御物質(抗体)を測定する検査になります。
ピロリ菌とは胃の中に住み着く細菌で、胃炎を引き起こす事により胃がんを発生させやすくする事がわかっています。
ピロリ菌抗体があると胃にピロリ菌がいるもしくはいたということになります。
◆ 血清ペプシノーゲン法
ペプシノーゲンは胃から消化のために分泌される物質で、一部は血液中に漏れ出るため血液検査で測定する事ができます。
ピロリ菌に感染すると胃が炎症を起こし粘膜が薄くなっていきます(胃粘膜の萎縮)。例えるとピロリ菌の炎症で火事になった部分が焼け野原のようになるイメージです。
焼け野原になった(萎縮が進んだ)粘膜部はペプシノーゲンの分泌がなくなっていきますので、ペプシノーゲンの値が下がっていく事になります。ペプシノーゲンを測定する事でどのくらい胃の萎縮が進行しているかを判断する事ができます。
胃がんは萎縮の進んだ粘膜部より発生しやすいとされてますのでペプシノーゲンが低い=萎縮が強い⇨胃がんになりやすいという事になります。
◆ ABC検診の判定方法
上記のピロリ菌抗体検査とペプシノーゲン法の検査の結果でリスク分類をしていきます。
A群⇨D群で胃がんのなりやすさが低⇨高となります。
D群でピロリ菌が陰性なのに胃がんになりやすいのは、ピロリ菌が炎症を起こして胃粘膜が焼け野原(萎縮)になった部分が胃全体に及ぶと焼け野原の部分にはピロリ菌自体も住めなくなるため自然にいなくなる事があるからです。それほど胃粘膜の萎縮が高度であるという事になります。
またピロリ菌を除菌した事がある人はこの表とは別にE群に分類され、ピロリ菌未感染者とはまた違ったリスクがあるためこの表とは別扱いにし、定期的な内視鏡検査が必要とされています。
ABC検診は現在胃がんがあるかどうかの検査ではなく、胃がんにどのくらいなりやすいかの検査になります。
胃がんの診断には内視鏡などの画像検査による精密検査が必要になりますので、ABC検診にて胃がんのリスクがある場合には定期的に内視鏡検査を受けるようにしましょう。
正幸会病院 日本消化器病学会専門医 東 忠里