喘息の診断と管理:呼吸機能検査(スパイロメトリー)

 

前回は、息を吹き込むだけで気道の炎症状態を把握できるという「呼気NO検査」についてご紹介しました。ただ、喘息が判明した場合には気道の炎症状態だけでなく、気道がどれくらい狭まっているかを正確に知り、呼吸機能全体の状態をつかむことが必要です。今回は、気管支喘息や気管支喘息発作に焦点を当てて、診断・管理で非常に有用とされている呼吸機能検査(スパイロメトリー)についてもお話していきます。

 

喘息とは?

喘息は、呼吸した空気が通る道(=気道)が慢性的に炎症を起こしている状態で、一般的に「気管支喘息」と呼ばれています。症状がない時でも炎症が起きているため、粘膜がはがれて敏感になっていたり、むくんで気道が狭くなっていたりと、わずかなアレルギーや刺激などに対して過敏に反応する病気です。また、正常な気道では影響を受けないような少しの刺激に対して反応し、気道がさらに狭くなり、ゼーゼー、ヒューヒューといった喘鳴(ぜんめい)という呼吸音や、激しい咳、呼吸が苦しくなるなどの症状が現れることを喘息発作と言います。喘息発作は軽度から重度までさまざまで、最悪の場合には命に関わることもあります。
昔は子どもの病気というイメージでしたが、成人の患者数も増えていて20人~30人に1人は喘息持ちというくらい身近な病気でいつ発病してもおかしくありません。

 

喘息の症状

喘息の症状は人によって異なりますが、一般的なものとして以下が挙げられます。

  • : 特に夜間や早朝に悪化しやすい
  • ゼーゼーやヒューヒューという呼音: 呼吸時に笛のような音がする(喘鳴)
  • 息切れ: 呼吸が浅く、十分な酸素を取り込むことが難しくなる
  • 胸の圧迫感: 胸が締め付けられるような感覚

これらの症状は、発作が起こると急激に悪化することがありますが、日常生活でも軽度の症状が慢性的に続く場合もあります。喘息の中でも、長引く乾いた咳が特徴の「咳喘息」は喘鳴や呼吸困難がありません。

 

喘息発作の原因

喘息の診断は、さまざまな検査を行い総合的に行われますが、まず初診で重要となるのが問診です。症状や頻度、タイミングなどを具体的に医師に伝えることが診断の役に立ちます。

 

 

 

 

 

 

その他、アレルギーの有無、既往歴、家族歴、生活環境(喫煙、飲酒、ペットの有無)についても、問診で得られる重要な情報となります。
また、聴診で得られる気道狭窄音(喘鳴)も診断のポイントですが、喘息の状態を総合的に把握し診断するために、いくつかの検査を行います。

気道の炎症を測定する「呼気NO検査」や、気道狭窄の程度や肺機能を数値やグラフで評価する「呼吸機能検査(スパイロメトリー)」は非常に有用です。その他、気道過敏性テスト、血液検査や皮膚テストによるアレルギー検査。他の肺疾患(肺炎、COPD、気胸など)との鑑別を行うために、胸部X線やCTを撮影する場合もあります。

 

呼吸機能検査(スパイロメトリー)とは

呼吸機能検査(スパイロメトリー)は、息を吸って吐き出すことで、肺の容量や空気の流れの速さを測定する検査です。気道狭窄の進行度や呼吸機能の状態が数値やグラフで示され、病状の進行度や治療効果の判定に役立ちます。検査は、鼻から空気が漏れないようクリップで鼻を塞ぎ、マウスピースを口にくわえて行います。深く息を吸い込み、最大限の力で一気に吐き出す動作を数回繰り返してデータを収集します。

 

呼吸機能検査(スパイロメトリー)で測定する項目と指標

●肺活量(VC:Vital Capacity)
肺に入る空気の量で、最大限に空気を吸い込んで、全て吐き出したときの量。性別、年齢、身長から算出される標準値の80%以上が正常範囲とされます。

●努力性肺活量(FVC:Forced Vital Capacity)
最大限に吸い込んだ後、強く息を吐き出し切った空気の総量。肺の全体的な機能を評価する指標となります。

●1秒量(FEV1:Forced Expiratory Volume in 1 Second)
最大努力呼気で最初の1秒間に吐き出せる空気の量です。気道の狭窄の程度を示します。

1秒率:努力性肺活量に対する1秒量の割合(FEV1/FVC比)
1秒量を努力性肺活量で割った割合です。70%以上が正常範囲とされ、70%未満の場合は喘息や気道閉塞の可能性が疑われます。

 

喘息の治療

喘息の治療は、発作の頻度や重症度に応じて異なります。治療に使われる薬は、毎日継続する「長期管理薬(コントローラー)」 と、発作時に使用する「発作治療薬(リリーバー)」に大きく分けられます。

 

長期管理薬:気道の炎症を抑えるための薬
喘息の場合、症状がない時でも慢性の炎症が起きているため、毎日の治療が重要です。基本となるのは、吸入ステロイド薬を用いて炎症を抑えること。また、気道を広げ呼吸を楽にする長時間作用性β2刺激薬との配合剤もよく使われます。

発作治療薬:発作時に気道を広げる薬
発作が起きた際には、短時間作用性吸入β2刺激薬などを使用し、狭くなった気道を素早く広げます。ただし、これらの発作治療薬には炎症を抑える効果がなく、根本的な治療にはなりません。発作治療薬だけを使い続けると、炎症が悪化し、喘息が悪化するリスクがあります。

治療を続ける重要性
喘息の症状である気道の炎症を抑えることで、刺激に対して敏感に反応しなくなり、発作も起こりにくくなります。日々の治療を怠り発作を繰り返すと、気道粘膜が厚くなり、気道の狭窄が元に戻らなくなることがあり、治療が難しくなります。そのため、長期管理薬を使い、根気強く治療を続けることが大切です

 

喘息の予防と管理

喘息は完治が難しいものの、適切な予防と管理により発作の頻度を減らし、日常生活の質を向上させることが可能です。

・健康的な生活習慣
バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠を心がけましょう。

・発作の原因を回避
アレルゲン、環境要因、感染症、運動、ストレスなど、発作の引き金となる要因を避けることが重要です。

・定期的な医療機関での診察
定期的に診察を受け、呼吸機能検査(スパイロメトリー)や呼気NO検査などで、気道の状態を確認しましょう。医師と連携し、治療薬の種類や量を調整しながら、適切な治療計画に基づいて管理することが大切です。

 

 

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