呼気NO検査で咳の原因が判明!

毎日猛烈に暑い日が続きますね。もはや地球温暖化ではなく、地球沸騰化の時代に突入していると感じます。この暑さは、エアコンがないと命に危険を及ぼすレベルなので使用頻度も高くなるのは当然のこと。一方で、この夏、長く続く咳に悩まされる人が増加しているとニュースがありました。咳や喘息は季節の変わり目や、空気の乾燥する冬に多いとされていますが、夏のエアコンの使用による室内の乾燥、エアコン内部のカビやホコリ、屋内と屋外の温度差等により、咳ぜんそくを発症する人や喘息を悪化させる人が増えていると考えられます。また、今夏は新型コロナウイルス感染症の感染者数は再び増加しており、新型コロナウイルスに感染したことで気道に障害が残り「咳ぜんそく」を引き起こすケースも多くみられます。喘息はもちろん、喘息のようにゼーゼーを伴わない隠れ喘息と呼ばれる「咳ぜんそく」には、息を吹き込むだけで気道の炎症状態を把握することができる「呼気NO検査」が有用です。

 

厚生労働省「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況について」
https://www.mhlw.go.jp/content/001289186.pdf

 

咳ぜんそくついてはこちら⇒長引く咳に注意 ~咳喘息とは~
https://www.seikohkai-hp.com/blog/2818/

 

 呼気NO検査とは?

呼気NO検査とは、吐く息(呼気)の中に含まれる一酸化窒素(NO)の濃度を測定する検査。通常、気道が健康な状態ではNOの濃度は低く保たれています。しかし、喘息などで気道に炎症が起きると、好酸球という白血球の一種が集まり、炎症反応を引き起こします。この炎症により、気道の粘膜を構成する上皮細胞で誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)というNOを生成する酵素が活性化。その結果、大量のNOが作り出され、呼気中のNO濃度が上昇するというわけです。呼気NO検査では、このNO濃度を測定することにより、気道の炎症の存在や程度を把握できます。

 

 呼気NO検査で咳ぜんそくが判明

呼気中のNO濃度から気道に炎症があることが確認できるので、これまで喘息だと言われたこともない、激しい咳をしているわけでもない人が、呼気NO検査によって、咳だけが続く隠れ喘息と呼ばれる「咳ぜんそく」と判明することがあるのです。咳ぜんそくは、放置すると将来的に重症化する可能性があるため、早期診断が重要です。

ただ、喘息患者の呼気中で増加するガスはNO(一酸化窒素)だけではなく、エタン、一酸化炭素、ペンタンといった成分も炎症に伴って濃度が上がります。これらのガスは、たばこが原因で発症する慢性閉塞性肺疾患(COPD)でも同様に濃度が上昇します。しかし、NO(一酸化窒素)の濃度は喘息に特異的に高くなることが多いため、呼気NO検査を用いることで、COPDとの鑑別診断が可能です。

 呼気NO検査の基準値

呼気NO検査の測定値はppb単位で表示されます。日本人の成人健常者を対象とした調査によると、呼気NO濃度の正常値は約15ppb、正常上限値は約 37ppbと算出されています。NOの基準値については、見解がさまざまありますが日本呼吸器学会では、吸入ステロイド未使用の場合22ppb以上で喘息の可能性があるとし、37ppb以上になると喘息の可能性が高いとされています。

喘息の患者さんにとっては、呼気NO濃度検査を定期的に行うことで、気道炎症状態の評価や、吸入ステロイド治療後にNO濃度が低下するかを確認して治療の効果を評価することができ、ステロイド薬剤等の投与量の調節の目安にもなります。

 

 呼気NO検査の方法

呼気NO検査は機器によって多少の違いはありますが、息を吐くだけでとても手軽で簡単な検査です。当院の測定機器は2023年に発売されたNO breath® V2です。できるだけ深く息を吸い込み、マウスピースを加え、一定の速さでゆっくりと息を吐きます。吐き出す時間は成人が約12秒、小児が約10秒。吹き終わりと同時に結果が表示されるもので、最短1分で測定が可能です。

呼気NO検査は、2013年より健康保険適応となりました。喘息や咳ぜんそくの疑いがある方、喘息の治療中の方(治療効果を見るため)、無症状であっても家族に喘息患者がいる方等、患者様の状況に合わせて検査を行います。

 

 呼気NO検査で早期診断、悪化を防ぐ

喘息と言えば、ゼーゼーヒューヒューという典型的な喘息の呼吸音と激しい咳の発作、呼吸困難が思い浮かぶかもしれませんが、近年、咳だけが長引く「咳ぜんそく」が増えています。咳はでるけれど激しく咳き込まないし、風邪の症状もないからと放置していませんか?甘く見ていると、症状の悪化や合併症を引き起こし重症化することもあります。咳やぜんそくは症状が長引くほど、治療は難しくなるため早期診断がカギとなります。

呼気NO検査は、痛みを伴わず息を吐くだけで検査時間も短く、副作用もありません。小さなお子様でも安心して受けられる検査で気道の炎症を早期に検出し、喘息はもちろん、咳ぜんそくも見つけることができます。咳が気になる方は、日常生活への支障を最小限に抑え、健康な毎日を守るために、早期診断と適切な治療を開始できるよう専門医を受診しましょう。

 

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