何杯飲んだかではなく、純アルコール量が大事!~飲酒ガイドライン~

2024年2月に「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」が厚生労働省より公表されました。アメリカやイギリス、韓国、オーストラリアなど海外ではすでに、自国民の体質や文化を踏まえた飲酒のガイドラインが普及していますが、日本で飲酒に伴うリスクなどを含めて適切な飲酒量、飲酒行動を示した「飲酒のガイドライン」が策定されるのは初めてです。不適切な飲酒は、当事者の健康のみならず、その家族にも深刻な影響を及ぼすこと、自殺などの重大な社会問題につながることもあるため、現代の日本社会における大きな課題と言えるでしょう。今回は、飲酒による疾病別の発症リスク、自分に適した飲酒量や健康に配慮した飲み方等、飲酒の理解を深めて実生活で活用できる「飲酒のガイドライン」の内容について説明していきます。

 

飲酒量=純アルコール量

飲みの席では、よく「何杯目?」というやり取りがありますね。ただ、実はお酒をどれだけ飲んだのか?を把握する際、1杯、2杯と単にお酒の量だけで考えるのではなく、お酒に含まれる純アルコール量を飲酒量として把握することが重要とされています。確かに、アルコール濃度の薄いお酒と濃いお酒ではアルコールの摂取量が違いますね。アルコール度数の違うお酒を飲んでも、純アルコール量を基準にすると自身の飲酒状態が分かるというわけです。

<お酒に含まれる純アルコール量の算出式>

飲んだアルコールの量(ml× アルコール濃度(度数/100× 0.8
最近ではパッケージに純アルコール量が表示されているものもあります。

例①:アルコール度数5%500mlの缶ビールの場合
純アルコール量は「500(ml) × 0.05 × 0.8」=20(g)となります。

例②:市販されているアルコール度数9%の缶チューハイの場合
純アルコール量は「350(ml)×0.09×0.825.2(g)となります。

例③:日本酒の場合
純アルコール量は「1(180ml)×0.15×0.821.6(g)となります。

 飲酒量は少なくてもアルコール度数が高いと純アルコール量も増えるので、飲んだ量だけでは計れないということです。

  飲酒量と発症リスク
では、どれくらいの純アルコール量で、どのような身体への影響があるのでしょうか。世界保健機関(WHO)によると、飲酒の純アルコール量が少ないほど、循環器疾患やがん等の疾患の予防ができているという報告もあります。ガイドラインでは、アルコールがもたらす身体への影響は年齢・性別・体質・体調で変化することを前提として、生活習慣病のリスクを高める飲酒量を示しています。


生活習慣病のリスクを高める飲酒量は
1日当たりの純アルコール摂取量:男性 40g以上、女性 20g以上と定義されています。



ただ、飲酒による疾患への影響については個人差があり、疾患によっても、臓器によっても影響が異なります。下記表にあるように、高血圧や男性の食道がん、女性の出血性脳卒中などは少しでも飲酒をすると発症リスクが上がると考えられます。その他の疾病についても、研究結果に基づく疾病ごとの発症リスクが上がる飲酒量(純アルコール量)が示されています。

 



お酒の影響を受けやすい3つの要因
飲酒したアルコールの大半は、小腸から吸収され、血液を通じて全身を巡り、肝臓で分解されます。アルコールを分解する酵素の働きには個人差があるため、少量の飲酒でも大きな影響を受けることもあります。全身を巡るアルコールが臓器に与える影響は、年齢や、性別、体質等の違いによって個人差があり、受ける影響もさまざまです。

① 年齢の違いによる影響・・・高齢者は若い時と比べて、体内の水分量が減り、同じ量のアルコールでも酔いやすくなる。飲酒量が一定量を超えると認知症の発症の可能性も高まる。飲酒による転倒・骨折、筋肉の減少の危険性も高まる。20歳以下はもちろん、20代前半の若者も脳の発達途中であり、多量の飲酒によって脳の機能低下や高血圧等の健康問題リスクが高まる可能性がある。
② 性別の違いによる影響・・・女性は男性に比べて体内の水分量が少なく、分解できるアルコール量も少なく、女性ホルモンの働き等によりアルコールの影響を受けやすい。男性に比べて少量かつ短期間でアルコール関連肝硬変になるなど体への影響が大きく現れる可能性がある。
③ 体質の違いによる影響・・・体内の分解酵素の働きの強弱に大きな個人差が有り。弱い場合には、顔が赤くなる、動悸や吐き気等をもよおす状態になることがある(フラッシング反応)。また、分解酵素が弱いまま長年飲酒して、不快感なく飲酒できるようになったとしても、アルコールに起因する口内のがんや食道がん等のリスクが非常に高くなるといったデータもある。


良いお酒飲み方とは?

① 自分の飲酒パターンや適切な量を把握して、自分の状態に応じた飲酒を心がける。
② あらかじめ量を決めて計画的に飲酒することで過度な飲酒を避ける。
③ 飲酒前又は飲酒中に食事をとることで、血中のアルコール濃度をあがりにくくする。
④ 飲酒の合間に水(又は炭酸水)を飲むなど、アルコールをゆっくり分解・吸収できるようにする。
⑤ 一週間のうち、飲酒をしない日を設ける。


避けるべき飲酒習

①一時多量飲酒:短期間に大量のアルコールを摂取することで急性アルコール中毒や外傷の危険
②他人への飲酒の強要:アルコール影響は個人差あり、急性アルコール中毒や急激な体調変化が起こる可能性
③不安や不眠を解消するための飲酒:アルコール依存症や睡眠障害のリスクが高まる
④病気療養中の飲酒・投薬後の飲酒:免疫低下や薬の効果低下、副作用のリスクがあるので避けましょう
⑤飲酒中・飲酒後の運動・入浴:血圧変動の増加や転倒による体の損傷の危険性があるので注意

 

飲酒チェックツール

厚生労働省は、SNAPPY PANDA(スナッピーパンダ)という飲酒チェックツールを提供しています。下記のサイトへアクセスして、自分が飲んだお酒を選んで、棚にドラッグして並べるだけで、摂取した純アルコール量とお酒の分解にかかる時間が表示されるので、なかなか便利で面白いツールです。是非、試してみてください。その他、スマートフォン向けアプリでも、「アルコール」というキーワード検索してみると、日々の摂取量や休肝日を記録して、グラフで管理できるものなどたくさん開発されています。

 

参考サイト

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